安住洋子さんの『いさご波』読了。
5編とも『沙(いさご)の波』『暁の波』とすべて波が表題につく。
どの作品も味わいがあるが特に最後の『澪の波』が清々しい。
13歳の少年が主人公というのも時代小説では珍しいが,少年から青年へと成長していこうとするその純粋な心理を巧みに描いている。
安住さんの『日無坂』で,勘当された主人公が父が亡くなる前日に偶然すれ違う場面がある。その場面が実に鮮明に浮かび上がってくる。
今回の5編でも,それぞれの印象的な場面が自然に浮かび上がってくるから不思議だ。平易な文章を丹念に吟味して書き込んでいるからだろう。
『澪の波』でも,最後の少年が走り続ける場面が目に焼き付く。
今後ますます楽しみな作家だ。
04月08日(日)17時43分|安住洋子
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安住洋子さんの『いさご波』を読み始める。
安住さんは寡作で,これまで『しずり雪』『夜半の綺羅星』『日無坂』の3作しか文庫化されていないが,3作とも読んでいる。どの作品もじわっとくる読後感が得られる。
この作品は5編から成る短編集だが,今その2編まで読んだところ。
これまでと同様の読後感だ。佳作といっていい。
第1編の表題にもなっている『いさご波』は赤穂藩を浪人した武士の息子が,苦労の末に仕官を果たしたものの安穏な生活を一変させる試練。その時とるべき道は忠義か恩義か。
つまり,武士として生きる(死ぬ)のか,それとも人として生きる(死ぬ)のか。
このテーマは山本周五郎が開拓し,藤沢周平が確立した時代小説というジャンルが追い求めてきたテーマと一致する。
ということは,今ある時代小説は山本周五郎と藤沢周平を抜きにしては語れないということを,この安住さんの作品を読んでしみじみと思わざるを得ない。
偉大なり,山本周五郎,そして藤沢周平。
04月07日(土)21時31分|安住洋子
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安住さんの作品は『しずり雪』『夜半の綺羅星』を読んだ。この2作とも良かったが,今回の作品は乙川作品に通じる情感がある。
ぜひ続編を期待したい。
02月02日(水)16時21分|安住洋子
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