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佐藤さんの『たどりそこねた芭蕉の足跡~八州廻り桑山十兵衛』を読み始めた。このシリーズ第7作目。
佐藤さんのシリーズで武士を主人公にしているのは他に『物書き同心居眠り紋蔵』と『縮尻鏡三郎』がある。
紋蔵にしても鏡三郎にしてもそこそこ腕は立つが,刀を抜くことはない。
八州廻りなどいかにも「法で裁けぬ悪を闇に紛れて成敗!」となる設定だが,十兵衛は紋蔵や鏡三郎同様しっかり法を守っている。そこがこの3つのシリーズのいいところだ。
さらに共通するのは役人というそれなりに権威をもつ役柄ではありながら,実はその権威の末端であくせく気を揉みながらストレスも感じながら生きているという点。佐藤さんの作品はどれも今の時代を映した時代小説だと思う。
02月29日(水)18時54分|佐藤雅美
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『だいこん』読了。
『ほうき星』『菜種晴れ』そして『だいこん』と女性を主人公にした作品が続いたが,今回の『だいこん』が出版は一番古い。しかし読後感はこの『だいこん』が一番良かった。
ダイナミックな転換やそれほど大きなクライマックスがあるわけでなく,山本作品にしては淡々と進んでいくのだが,それがむしろ主人公の「つばき」を身近に感じさせてくれたのではなかろうか。
回想しながらの展開も違和感がなく「これからどうなるのか」という心配を残したままのオープンエンドは,読者にこれからの主人公の人生を陰ながら応援して欲しいというメッセージのようにも受け取れる。
山本さんの骨っぽさをちょうどいい具合に押さえて,宇江佐さんの情感を注いだような,山本作品の中でも出色の作品だと思う。なぜいままで読まなかったのだろう。
02月28日(火)18時55分|山本一力
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山本さんの『だいこん』を読み始めた。
最近『ほうき星』『菜種晴れ』と女性を主人公にした作品を読んだが,どちらも気持ち良く読めた。
女性が主人公といっても,山本作品らしい「男だて」の場面も随所に用意されている。
何より女性主人公が自分で生きていける「技」を持っており,自分や世間に甘えていないのがいい。
この『だいこん』も主人公の「つばき」を応援しながら読んでいる。
02月25日(土)18時38分|山本一力
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佐伯さんの作品を最初に読んだのは『密命』だった。書店の時代小説売り場で偶然手に取りページをめくってみると,なんと主人公金杉惣三郎が剣の修行をした川が私の地元を流れている川の名ではないか。これは読まないわけにはいかないと思い読むようになった。
それ以降『悪松』『夏目影二郎』『吉原裏同心』『居眠り』『酔いどれ』『交代寄合』の各シリーズを読むようになった。なぜか『古着屋』と『鎌倉河岸』は1冊も読んでいない。
各シリーズのうち『居眠り』と『酔いどれ』を除くと『吉原裏同心』が10作まで,『密命』は5作まで。あとは2~3作で読まなくなった。
『居眠り』と『酔いどれ』を長く読んできたのは,どちらも主人公が読んでいて応援したくなるキャラクターだったから。でも,今やその面影はなくなってしまった。
02月25日(土)15時43分|佐伯泰英
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『酔いどれ』シリーズは,最初は面白かったのに。
孤軍奮闘する小藤次を江戸の人たちと一緒に応援したものだ。
ところが,もういけない。応援しようという気にならない。なぜなら,もう彼には応援はいらないから。
あまりに強くなり,同時に謙虚さが口先だけになってしまった。まわりにちやほやされるとそれも道理か。なるほど,そう考えればいいのか。
02月25日(土)13時02分|佐伯泰英
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『きりきり舞い』読了。
前半は,ちょっと軽すぎかなという印象だった。諸田さんらしい情感が感じられないような気がして,失敗かなと思ったら,後半から軽いノリはそのままに,主人公の人を思う気持ちの変化や深さがうまく表現され,心地よい読後感が得られた。
諸田さんの新しい境地。
02月20日(月)17時35分|諸田玲子
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諸田さんの『きりきり舞い』を読んでいる。
諸田さんの作品を初めて読んだのは『幽恋船』だったと思う。不思議な作風だと感じた記憶がある。その後次々と読んできたが,一作ごとに雰囲気が変わってそれぞれに魅力がある。
一番のお気に入りは『お鳥見女房』シリーズ。
他にも『髭麻呂』が楽しかった。シリーズ化されると思ったのにどうして? 残念。
02月19日(日)17時23分|諸田玲子
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『晋平の矢立』読了。
山本作品にしては中編ということもあってか,この人らしい大きなクライマックス場面はなかった。
『夢曳き船』の前編ということで,晋平がどういう苦労をしながら親方になれたのか,配下の腕利きたちはどういういきさつで彼のもとに集まってきたのか,さらには女房おけいとのなれそめは? などを期待していたのだが,そういう場面はなく,ちょっと拍子抜け。
ただ,最終章の『砂糖壺』がいい味を出していて,作品全体を救った感じ。
02月15日(水)16時01分|山本一力
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山本一力さんの『晋平の矢立』を読み始める。
私は,めったにハードカバーは買わない。理由は高いから。グッと我慢して文庫化されるのを待つ。
ところが,ごくたまにハードカバーを読むことがある。
実はおととし『夢曳き船』を図書館で読んでしまった。もちろん『晋平の矢立』は文庫化されておらず,
この『夢曳き船』がその続編だとは知らなかった。あとで気がつき「しまった~」
でもそれを知らずに読んでも『夢曳き船』は十分楽しめた。
『晋平の矢立』が届いて,山本さんにしては中編程度の厚さに意外な気がした。
今日はバレンタインデー。ワクワクするような歳ではないが,職場の女性から義理とは分かっていても,いただくとやはり嬉しくなるのは当然?
開けてさらに嬉しかったのは,時代小説好きの私にぴったりの『小判チョコ』

これは食べずにとっておこう
02月14日(火)18時50分|山本一力
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山本さんの『菜種晴れ』を読了。
『ほうき星』を先に読んだが,出版は『菜種晴れ』の方が先。
どちらも女性が主人公で,苦難を乗り越えてけなげに生きていくという設定は同じ。
ただ,これまでの山本さんの作品と比べて,微妙に読後感が違うのは,どちらもそうだが特に『菜種晴れ』は結末がオープンエンドだからだろうか。希望を持たせるというか,これから先は読者がご自由に想像力をふくらませて下さいということか。一力作品らしい「スカッ」とした気分にはさせてくれなかった。
まぁそれはそれでいいのだが,この『菜種晴れ』は後半のクライマックスからが,なんかあっけないような感じがしてしまって・・・。前半があれほど細かく描かれていたのに,ちょっと違和感を感じてしまった。
02月13日(月)18時43分|山本一力
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私が住む町は城下町。小高い山に城跡がある。地元では城山とよばれて親しまれている。麓に三の丸が築かれ,山上に天守を持つ本丸と二の丸が築かれたが,今は櫓門だけが往時を偲ばせる。
快晴の今日,久しぶりに登ってみた。けっこう急坂の山道を登ること30分で山頂に。途中で何人もにすれ違った。ほとんどは地元の私と同じかもっと年上の年長の方々。ところがけっこう若い20歳そこそこの若者が何人かいたのにびっくり。

この坂を毎日武士たちは・・・
最近地元の商工業者の中に天守閣を再建しようと言っている人たちがいると聞く。町の活性化とか言っているがバカげたことだ。1617年に築城わずか10年で焼失し,詳細もわかっていない天守閣を再建したところで所詮は模擬天守。何の歴史的意味もないし,だいいち,石垣だけになってしまったいるからこそ往時を偲ぶ風情があるのだ。金儲けしか興味のない連中に文化だとか歴史だとかを語って欲しくない。

本丸跡,この上に天守台。
02月12日(日)16時20分|地元情報
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山本一力さんの作品は文庫化されると同時に購入してきたつもりなのだが,この『菜種晴れ』のようについつい注文を忘れてしまっていたことがあるようだ。
他にないかと探してみたら『だいこん』もやはり見逃していた。
おそらく女性が主人公ということで二の足を踏んだのだと思う。
山本さんの作品はもちろん江戸屋の女将のような人も登場するが,やはり『男』の矜持を描くのが山本流という勝手な思い込みが強かったせいだろう。そのため女性が主人公という作品に躊躇したのだろう。
たとえば『ほうき星』も女性が主人公だが,実のところ周囲に登場する男たちを描いているのではないか。そのせいか,上巻はわくわくしながら読み進んだが,下巻になるとただストーリーを追うだけの読み方になってしまった。
『菜種晴れ』はどうだろうか。いまのところ快調。『ほうき星』は長編すぎたのがあだになった気がするが『菜種晴れ』はほどよい厚さだ。本当の意味で『女性』を描いているのか楽しみだ。
02月09日(木)21時28分|山本一力
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ようやく『ころころろ』読了。『しゃばけ』シリーズはどの作品も読むのに時間がかかってしまう。
決して面白くないとか退屈するとかいう理由ではない。若だんなや兄やをはじめとした妖たちとの会話や仕草をのんびり楽しんでしまうからだ。
ストーリー展開に追われて急かされるように読む小説が多いなか,この『しゃばけ』シリーズには癒される。
今回は,ちょっと切なくなる物語だった。でもそれが暗くならずにかえって心地よく感じられたのは「クスッ」と笑ってしまう場面がほどよく織り込まれているからだろう。今回はいつも以上に鳴家がいい味を出していた。
ところが『しゃばけ』シリーズはこれほど楽しませてくれるのに,他の畠中さんの作品はどうも楽しめない。『まんまこと』は多分2作目の『こいしり』まで。それ以降は読まないだろう。『若様組』も同様。他にもシリーズ化される作品があるだろうが読もうとは思わない。『しゃばけ』シリーズが良すぎるのか他がイマイチなのか?
『しゃばけ』はファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しており,ウィキペディアではこのシリーズを「ファンタジー時代小説」と位置づけている。たとえば同じファンタジーノベル大賞で大賞を受賞した『僕僕先生』はファンタジーでもいいと思う。でも『しゃばけ』はファンタジーを取って「時代小説」というジャンルがいいのではないか。
江戸時代の風俗や江戸の町の様子もしっかり考証されているし,何より「この時代には妖は本当にいたんだろう」と思わせてくれる作品だから。
02月08日(水)18時45分|畠中恵
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今日は私の誕生日。私は自分の誕生日には有給休暇をとることにしている。
家族がそれぞれ出かけた頃,のんびり起床。毎年午前中に,20年前に亡くなった母親の墓参りに行くのだが,
今年は持ち帰り仕事が午前中いっぱいかかって,墓参りに出かけたのが午後になってから。
その後,車で30分ほどの骨董店へ。去年一度訪れたことがあり,その時は『九谷焼』の盃を購入。2千円だったと思う。ところがその盃の縁が欠けてしまい,他のものではやはりしっくりこなくて再訪。
九谷焼は3つに分けられるんだそうで,
古九谷・・・江戸時代初期で50年ほどしか続かなかった。つまり幻的存在。
再興九谷・・江戸時代後期に再興されたもの。
新九谷・・・明治になって主に輸出向けにつくられたもの。
私が以前買ったのはもちろん新九谷。あの時はいくつか同じようなものがあったのだが,すでに売り切れ。
するとご主人が「九谷のいいカンピンがあるよ」と出してくれたのが,もちろん新九谷の輸出向けなのだが,とてもきれいでいい雰囲気。でもちょっとでかい。2合は入りそう。
「こっちのほうがめずらしくていいよ」と次に見せてくれたのがちょっと小ぶりで「これいいわ」
「このカンピンにはふたが付いててね。こういうのはめずらしいよ。形もいいでしょ」とご主人。
絵柄は六歌仙。いかにも輸出用だが日本的な風情は十分。
盃は伊万里。もうひとつおまけみたいな外は無地だが中に『東風吹かば・・』の歌が書かれたもの。まぁこれからの季節には良さそう。

春夏秋冬,日本酒しか飲まない(はじめにビールをコップ半分)私にとっては,
カンピンと盃は重要なアイテム。専用の戸棚にずらっと並べているのだが,使うのはいつもお気に入りのものになる。しばらくはこの九谷のカンピンと伊万里の盃,ときどき『東風吹かば・・』
02月06日(月)18時19分|お酒
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私が時代小説を読むようになった第1作目は,山本周五郎の『さぶ』
高校2年か3年かよく覚えてないんですが,ラジオの深夜放送でなぜかこの『さぶ』を紹介してたんです。
あのころの深夜放送といえば『セイヤング』か『オールナイトニッポン』
このどちらかだと思います。ジョッキーは誰だったんだろう?
どうしてまた『さぶ』の紹介なんかしたんだろう?
まあそれは謎として「へ~,そんな本があるのか」って感じで文庫本を買って読んだんです。
これが私の時代小説との初めての出会い。
そんなわけで学生時代は山本周五郎作品を片っ端から読んでいきました。
そして同時進行で『司馬遼太郎』も。もともと歴史好きで小学校の頃からNHKの大河ドラマを見てましたから,司馬作品に手を出すのは必然。なんだかんだ言っても司馬作品はおもしろいですよ。
この2人の作品をほぼ読み尽くしたころ出会ったのが『藤沢周平』です。
きっかけはまったく覚えていません。たぶん書店の山本周五郎のすぐ近くに藤沢作品が置かれており,なにげに手を出したのが始まりだと思います。
それまでは山本作品・司馬作品以外にも,井上靖とか井上ひさし,はたまた吉行淳之介なども読んでたんですが,もうダメ。時代小説以外読む気にならなくなってしまいました。
あの読後感ですよね。
『藤沢作品』でしか得られない,あの読後感をもう一度味わいたいからなんですね。
02月04日(土)15時10分|藤沢周平
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畠中恵さんの『ころころろ』を読んでいる。『しゃばけ』シリーズの第8弾,ますます絶好調。
とは言うものの,実は「わおー,読むぞ~」というわくわく感はあまり感じないんですね。
買ってもしばらく本棚に置いておいて,他に読む本がなくなってきたときに「あっ,『しゃばけ』があったんだ!」という感じなんです。
劇的な展開があるわけではないし,スカッとしたヒーローが登場するわけでもないので,ついつい後回しになってしまうんですね。
でも,読み始めたらハマってしまうんです。決して大笑いするわけではないんだけど,思わずクスッとなる表現がたまらないですね。「これって現実ではあり得ないよな」とわかっていても「もしかしたら・・・」っていう,妙な現実感があるんですね。だから,このシリーズを寝る前読んだら「夜中に鳴家が出てこないかしら」とか妙な期待感が生まれたりするんでしょうね。
何かほんわかしたこの雰囲気,あくせく仕事に追われている自分を忘れさせてくれます。
02月01日(水)21時37分|畠中恵
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