佐藤さんのシリーズで武士を主人公にしているのは他に『物書き同心居眠り紋蔵』と『縮尻鏡三郎』がある。
紋蔵にしても鏡三郎にしてもそこそこ腕は立つが,刀を抜くことはない。
八州廻りなどいかにも「法で裁けぬ悪を闇に紛れて成敗!」となる設定だが,十兵衛は紋蔵や鏡三郎同様しっかり法を守っている。そこがこの3つのシリーズのいいところだ。
さらに共通するのは役人というそれなりに権威をもつ役柄ではありながら,実はその権威の末端であくせく気を揉みながらストレスも感じながら生きているという点。佐藤さんの作品はどれも今の時代を映した時代小説だと思う。