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野口卓『猫の椀』読了

『猫の椀』読了。
この設定で例えば宇江佐さんや澤田さん乙川さんあたりが書いたら,それなりの作品に仕上がったのではないかと思う。
文章がはっきり言って稚拙。特にセリフが悪すぎた。そのため出来の悪い紙芝居のような風景しか浮かんでこない。
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山本兼一『利休にたずねよ』読了。

『利休にたずねよ』読了。
24のエピソードを読み進むにつれ「利休の美学」が明らかになっていくのだろうと期待しながら読んでいったが,見事に肩すかしを食らってしまった。これでは『白鷹伝』からの4部作には遠く及ばないただのエピソード集。
確かに「鉄砲作り」や「城づくり」のような「物」を極めるのではなく「美」というきわめて抽象的で,しかも利休のように内面的な美を求めた人を描くのは難しいだろう。美しい絵をいくら文章でうまく書いてもその美しさを伝えることができないのと同じなのかもしれない。
それにしても中盤まではまだ読めたが後半がいけない。あの女性をこの物語の中に登場させた意味が分からない。いったい何を「利休にたずねよ」と言うのだろう。

最初の4部作を読んで,最も楽しみな作家の一人になった山本さんだが,それ以降は読むたびに失望感が広がる。あれだけの作品を書いた人なのに。

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『利休にたずねよ』意外な手法

山本さんの『利休にたずねよ』を読んでいる。
てっきり長編だと思っていたら,まったく意外な手法だった。
利休に関わりのある人物の彼とのエピソードが綴られた24編の連作集になっている。
24編のうち利休が7回(宗易・千与四郎の名で2回),秀吉が3回,宗恩・宗陳が各2回登場するので,すべてで14人ということになる。
この24編を1編ずつ読むにつれ次第に『利休の美学』が解き明かされていくのだろう。

ところが24編にはそれぞれ表題がつけられているのだが『利休にたずねよ』という表題はない。
いったい何を「利休にたずねよ」というのだろう。その答えを探すのも楽しそうだ。

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山本兼一『利休にたずねよ』読むことに

山本さんの『利休にたずねよ』を読むことにした。
山本さんの作品を最初に読んだのは『白鷹伝』
「骨太な作品を書く人があらわれた」と嬉しくなったのをおぼえている。それから『雷神の筒』『火天の城』『いっしん虎徹』と立て続けに読んだが,どれも最後まで一気に読ませる迫力があり,新刊が待ち遠しい作家の1人になった。
その後『千両花嫁』『狂い咲き正宗』と,シリーズ物の第1作を発表し新たな作風を見せたのだが,やはりこの人には長編が似合うようだ。

この作品はもちろん利休が主人公。私のような浅学には「利休の美学」が分かるわけもないのだが,
「目に見える美しか認めなかった秀吉」と「心の中にしか見えない美を追求した利休」の対立ということになるのだろうか。

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高田郁『夏天の虹~みをつくし料理帖』読了

『夏天の虹』楽しみなシリーズということもあって一気に読了。
前半の小松原との関係は予想通りの展開。
中盤になって又次の存在が大きくなり「なるほど」そういう展開に持って行くのかと思っていたら,まさかの最終話。
これまでとは全く違う読後感。でもそれは決して悪くなったわけではない。たしかに今回は重くはなったが,これからの澪の成長を見守っていきたいという読み手の気持ちは変わらない。
次作からはひと味違うシリーズに生まれ変わっているような気がする。

それにしてもこのシリーズに登場する料理,どれもおいしそう。
今の時代,冬でもナスやキュウリが手に入り,逆に夏でも白菜や大根が手に入る。昔の人は季節の物しか手に入らないが故に季節の移ろいに敏感で,だからこそその時々を大事にし,季節ごとの楽しみ方も心得ていたのだろう。
今は寒いか暑いか,プールかスキーかぐらいしか季節を感じることができなくなってしまった。
今しか食べることができない物を食べるのが一番おいしく最高の贅沢なんでしょう。

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高田郁『夏天の虹~みをつくし料理帖』読むことに

きのう書店から届いたばかりの,高田郁さん『夏天の虹~みをつくし料理帖』を読むことにした。
このシリーズは澤田ふじ子さんの『公事宿』とともに今一番楽しみなシリーズだ。

『みをつくし』シリーズは今回が第7作となるが,実はちょっと不安もある。
第5作・6作の展開をちょっと急ぎすぎたのではないかということ。小松原の正体をもっと謎のままにしてほしかった。特に第6作のラストは予想通りだったが,あそこまで進んでしまうとその後の展開を心配してしまう。結ばれそうで結ばれない2人を読み手としてはやきもきしながら見守っていきたかったのだが…。
この7作目ではその後の2人の関係がどう描かれるのだろうか。おそらくこれまでとは違った読み味になるだろう。それが良い味になることを期待したい。

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葉室麟『いのちなりけり』読了

葉室麟さんの『いのちなりけり』読了。
冒頭の場面の咲弥と雨宮蔵人との関わりが読み進むにつれ明らかになっていき,最後にはその冒頭の場面から2人の再生が始まるという構成がうまい。

ただ,水戸光圀,藤井紋太夫,柳沢保明,吉良上野介,熊沢蕃山と有名どころを配置し,さらには助さん・格さん,おまけに八兵衛らしき人物まで登場させたのはちょっと…。
政治権力の道具にされようとなりながらも凜として自分の生き方を貫こうとした2人を描くために有名どころを配置し,その政治権力の大きさと醜さを強調しようとしたのであろうが,はたしてそこまでする必要があったのだろうか。
その結果彼らの人物像が浅くなってしまい蔵人の描き方まで後半は劇画調になってしまった。
葉室さんの筆力なら鍋島本家と小城藩,鍋島家と龍造寺家との確執だけにとどめたほうが深みが生まれたのではなかろうか。

決して悪い作品ではなく十分な読みごたえはあったのだが『銀漢の賦』や『秋月記』ほどの感銘は得られなかった。

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葉室麟『いのちなりけり』読み始めた

葉室麟さんの『いのちなりけり』を読み始めた。
葉室さんの作品は『乾山晩愁』『銀漢の賦』『秋月記』に次いで4作目。
この『いのちなりけり』は文庫化されたのは『秋月記』の前になる。

『銀漢の賦』も『秋月記』も「男の生き方」を考えさせてくれる名作だと感じたが,この『いのちなりけり』は咲弥と雨宮蔵人という男女それぞれの生き方や心の有り様を描いてくれそうだ。期待通りの序盤。

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乙川優三郎『逍遥の季節』読了

乙川さんの『逍遥の季節』読了。
芸に生きようとする女性が逆境を乗り越え自分の信じた道を生きていこうとする姿を,きれいな文章の中に描いておりどの作品も読後感が心地よい。

でもしばらくたって思い返してみると,女性に自立という言葉がなかったと言っていいこの時代に,果たして彼女たちの逆境とは逆境と言えるほどのものだったのかな?むしろ恵まれているほうじゃないの?
乙川さんのきれいな文章にまんまとしてやられたような気が・・・。

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乙川優三郎『逍遥の季節』読み始める

乙川優三郎さんの『逍遥の季節』を読み始める。
新刊案内でこの本を見たとき,時代小説らしからぬタイトルだなと思い,内容を確かめたうえで購入した。

岩井さんの軽妙から乙川さんの情感へと急転換したので,最初の数ページは頭を切り換える必要があったのだが,すぐに乙川さんの世界へ浸ってしまった。

私は『凜』という字が好きで,この頃では葉室さんの作品にこの文字を感じるのだが,実は最初にそれを感じたのが乙川さんの作品だ。
この『逍遥の季節』は芸の道に生きる女性たちを描いている。まだ第2編の途中だがやはり『凜』の文字が似合いそうだ。

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岩井三四二『一所懸命』読了

岩井三四二さんの『一所懸命』読了。
岩井さんの作品はどれもテンポが良く,しかもこの作品は短編集ということもあってあっという間に読了した。
あっという間だからといって,決して内容が乏しいということではない。むしろ逆。

時代小説の大半は江戸時代を舞台にしている。岩井さんは『一手千両』以外はほぼすべて室町・戦国・安土桃山時代を舞台にしている。しかも登場するのは無名の人物がほとんどだ。ところがそのなじみの薄い時代(特に室町)であるにもかかわらず,まったく違和感なくすっと物語の中に入っていける。
無名の登場人物を身近に感じさせてくれる巧みな人物描写のおかげだろう。

頼りない,でも健気に頑張ろうとする主人公たちを我が身に置き換え応援してしまう。そんな魅力のある作品だった。

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志水辰夫『青に候』読了

志水さんの『青に候』一気に読了。
私は読みかけのページには栞やスピンを挟んだりせず,ページの下の角を少し折るのが癖になっている(悪い癖ですが)。その折り目がこの本にも何カ所か付いていた。ということはやはり以前読んでいたということが確定。
一気に読んでしまうほどの面白い作品をおぼえていないとは,う~ん,よほど精神的に読書に集中できない時期だったのだろうか?
「あっ読んだことある」とはっきり分かったのが,ラスト近くのクライマックス。火事で中屋敷から避難した園子を必死で探す主人公の姿。「うんうん,こういう場面あったわ」と納得。

お家騒動という武家社会の不条理を軸にしながら友情と恋愛という青春を描き,さらにその切なさと同時に生きることへの希望を感じさせてくれる。
あの日から1年たった3月11日に,良い作品を読めた。

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志水辰夫『青に候』再読?

どう思い返しても志水さんの『青に候』の印象がない。
簡単な読書録をつけだしたのが22年の1月からだがそれにはのっていない。発行は平成21年10月1日発行となっているので発行直後に買ったのだろうか。それにしてもそんなに昔ではないのに・・・なぜ?

『つばくろ越え』ほどの作品を書く志水さんが,全く記憶にも残らない作品を書くとは信じがたい。
もしかして読んでないのでは? まさか書棚に置いたまま読んだつもりになってそのままにしておいた?
でもこの表紙絵には見覚えがある。
あれこれ考えても仕方ない。とにかく再読することに。

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志水辰夫『つばくろ越え~蓬莱屋帳外控』読了

志水さんの『つばくろ越え~蓬莱屋帳外控』読了。
実は『青に候』の印象が全くといっていいほど残っていなかったので,この作品も実はあまり期待していなかった。ところが,これが読みごたえ十分の作品だった。
飛脚問屋蓬莱屋の飛脚たちや主人が登場するのだが,彼らを主役とするのではなく彼らと関わる人々の生き様を描いている。その描き方に志水さんの愛情が注ぎ込まれていて,4編とも心地よい読後感が得られた。

それにしても,これほどの作品を書いた大ベテランの時代小説デビュー作『青に候』の印象が全く残っていないとはどういうことだろう?

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志水辰夫『つばくろ越え~蓬莱屋帳外控』

志水辰夫さんの『つばくろ越え~蓬莱屋帳外控』を読んでいる。
以前志水さんの『青に候』を読んでいるのだが,実はあまり印象に残っていない。
そのためこの作品も購入するかどうか迷ったのだが,設定が面白そうなので読むことにした。
予想以上に良い読み応えだ。変に『闇の仕事』っぽくなく,まっとうな商売なのだが悪は許さない。でも安っぽい正義感は振りかざさないという飛脚たちの姿勢が好ましい。まだ2話の終盤だがこの先も期待ができそうだ。

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佐藤雅美『たどりそこねた芭蕉の足跡』読了

佐藤さんの『たどりそこねた芭蕉の足跡』読了。
佐藤さんの作品は,表題作以外にも『大盗人藤八と三人の爆睡』など,作品はもちろんだがそのタイトルも魅力的だ。表題作だけでいえば,このシリーズの『花輪茂十郎の特技』
『縮尻』シリーズでは『首を切られにきたの御番所』
『物書き』シリーズでは『向井帯刀の発心』などなど。

佐藤さんのこの3つのシリーズは,法を忠実に守らなければならない役職。ところが桑山十兵衛の八州廻りという役目は権威を笠に着る悪役になったり,逆に「法で裁けぬ悪を斬る」という正義の暗殺者にもなったりと,いろんな主人公がいろんな小説やドラマに登場してきた。
佐藤さんの十兵衛は,そのどちらでもない本来の司法警察としての八州廻り。必然,当時の法が紹介される。これは『縮尻』も『物書き』のシリーズも同様。

佐藤さんの丹念な資料分析には敬服するし「なるほど,そうだったのか~」と読み手の勉強にもなる。
ただ,その解説的な部分が長くなるとせっかくの楽しいストーリー展開の腰を折られるよな気分になることもある。
佐藤さんの作品の場合,主人公のキャラクターを引き出すためには正確な時代考証や法解釈が必要なのはよくわかるが,作品によっては「くどい」と感じてしまうこともなきにしもあらず。
本作品もややそういう印象をもった。もちろんだからこそ楽しめた面もあるのだが。

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