本来の読書は小説。宇江佐さんの『彼岸花』をこちらは一気に読了した。
どの作品も人との関わりや別れを通して,新しい人生に踏み出していこうとする主人公を描いている。
第1話「つうさんの家」・・・老婆つうさんに預けられたおたえ
第2話「おいらのツケ」・・・隣人夫婦に育てられた三吉
第3話「あんがと」・・・・・4人の尼僧と尼寺に捨てられたおと
第4話「彼岸花」・・・・・・母と妹を許せないおえい
第5話「野紺菊」・・・・・・痴呆の姑の世話をするおりよ
第6話「振り向かないで」・・親友の夫と不倫するおくら
表題作の「彼岸花」は切ないけれど,残された人々を励ましてくれる。
「つうさんの家」ではおたえがつうさんとの関わりの中から成長していく姿が微笑ましく,最後ではつうさんの限りない愛情が伝わってくる。
「あんがと」はおとに関わる4人の尼僧の個性が楽しい。
やはり宇江佐さんの作品は安定感がある。当たり外れがない。だから安心して読めるし期待通りの読後感をもたらしてくれる。