この作品は,5編の短編から成っている。
どれも,江戸開府期の社会の混乱と激変の中で,武士を捨てた男たちの生き様を描いている。
この5編の構成がいい。
第1話『日照雨』での「修羅場」,第2話『梅花の下で』の「武士の儀式」
そして最終話『日本橋』での「希望」へとつながる。
「面白いじゃろう。普請は」
「はいっ,力が湧いてきます」
「いいことを言うの。そうよ,力が湧いてくるのよ。普請は力を与えてくれる」
千葉大学工学部建築学科出身。1級建築士で都市計画コンサルタントをされていた北さんならではのセリフ。
そして北さんは山形県出身。やはり藤沢周平氏の影響を受けたのだろうか。
しかし,決して単なる模倣ではなく,しっかりとした『北重人』の作品に仕上がっている。
2009年に61歳で急逝。もっと書いてほしかった。