by真兵衛
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山本一力『八つ花ごよみ』読了

巻末解説(細谷正充氏)の冒頭の文章が,この作品を見事に言いあらわしています。

いまでも忘れられない言葉がある。中学時代の何の授業中だったろうか。S先生が「自分さえよければいい」「助けあった方がいい」,どちらが建前で,どちらが本音だと思うと聞いてきた。ああ,前の言葉が本音で,後の言葉が建前。それで,そんな考え方は間違っていると持っていくつもりだろうと,心の中で思っていた。

だが,S先生のいうことは違った。「助けあった方がいい」が建前,「自分さえよければいい」が本音の人が多いといいながら,そんな人も本音のさらに奥にある心の奥底では,「助けあった方がいい」と思っているものだと断言したのだ。

世の中や大人を,斜に構えて見たくなる思春期に聞いたせいか,この言葉は妙に忘れられず,いつまでも胸に残った。そして社会人になって,いろいろな体験を経るにつれ,人の心の奥底には,優しくて強くて温かいものが確かにあると信じられるようになったのだ。

真兵衛
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