奥方様が,何かを始めたようです。
「何つくってるの?」
「どら焼きだよ」

どら焼き? これが?
・・・・・これが,・・・・どら焼き?
俺が知ってるどら焼きって,たいてい,まん丸なんだけど・・・。

「どら焼きにも個性があるんだよ」
でも,・・・できるの?
「似たような形をペタッとくっつければいいの,ほらね」

へぇ~,割れ鍋にとじぶたっていうか,似たもの夫婦っていうか,
ちゃんと相手が見つかるんだ。俺たちみたい。
「このどら焼きは,ふつうのどら焼きとは違うんだから」
そりゃ,見ればわかりますよ。
「そうじゃなくって,このあんこ」

このあんこがどうしたの?
「あたしの愛がつまってるんだよ」
ん? 愛? じっ・・・もう一度,じっ・・・,見つからない。
「はい,できあがり!」

おおっ,これいいじゃん!
「いっただきま~す!」
パチン! 痛てっ!
「これは,成功作だから,御次男様が食べるの!」
「お父さんのはこっち」

はぁ? これっ?
これって,説明しないと,だれもどら焼きって理解してくれないよ!
なんか,変な形の二つ折り携帯みたいなのもあるし・・・。
低いテンションで,「いただきま~す」
ぱくっ・・・。 ん? 旨い! 旨いよ!
もしかして,ほんとに愛がつまってたりして・・・。んなわけねっか。